2008年10月25日土曜日

情報デザイン特論②

今回は学生の自己紹介と佐藤雅彦、ポール・ランドの仕事と方法論について。

学生には社会人経験者が2人いて、1人はある国のプロのグラフィックデザイナーだったのを自国の小さな枠では収まることができない!ということでその国で年に1人(!)の奨学生として日本にやってきて、またデザインを学んでいるらしいです(具体的に何を研究しているかは英語が分からず、理解できませんでした。しかも、確か聞いたのは2回目だけど…)
もう一人は東京の大学でドイツ語を勉強した後、外国に1年留学して帰ってきて、武蔵美の通信課程に行きながら、家具の制作会社で4年間働いて、この秋からうちの大学でデザインを学んでいるそうです。
2人ともなんか自由で夢とチャレンジがあっていいなあと思いました。
僕はM1なのでそろそろ就活の時期で、いろんな不安が頭の中を渦巻いているので、なんだか少し勇気付けられた気分になりました。

で、佐藤雅彦とポール・ランドについて。

佐藤雅彦については僕も好きで実は紹介された“佐藤雅彦全仕事”も既に持っていました。
今、ふとWikipediaで検索してみると職業としてメディアクリエーター(表現者)と教授となっていました。“メディアクリエーター”って初めて聞きました…

大学は教育学部で卒業後入った電通で初め営業職だったところから転局試験を経て、クリエイティブ局に異動し、そこから初めてデザインとかCMを本格的にやり始めたそうです。つまりデザインは独学です。
ではいったいどのような方法論でCMやグラフィックをデザインしたのか。

それは“ルール+トーン”というものだそうです。

ルールというのは良いデザインやCMを作るための法則のようなもので彼の場合、CMを作ることから始めているので、世界の優れたCM集の中から自分が好きだと思うものを抜粋し、それらに共通する要素を見つけ出し、それを“ルール”として自分の作品にも適用したのだそうです。
トーンというのはそのルールをもとに作品を成立させる個性やディテールといえるものです。例えルールを知っているからといって、そのルールをもとにすれば誰でもが佐藤雅彦のようないい感じの作品にできるわけではなくて、そこには佐藤雅彦のトーンがあるからこそなんですね。

その後、今度は既にあるルールではなく、自分なりのルール、新しい考え方を生むべく、電通をやめて個人で活動するようになったそうです。


ルールとトーン。
デザイナーはまず、ルールを知らなければならない。そして、それに自分のトーンを加えていく、もしくはあえてそのルールを破っていく、ということで良い作品・デザインが生まれる。
という山崎先生の意見に僕も全面的に賛成です。
アーティストにおいても基本的にはそうだと思います。
研究においては基本です。

でも、たとえそんな風にルールとかトーンっていう方法論を持っていたとしても、30歳でほとんど経験したことのない分野であんな普通じゃない作品を堂々と提案するというのはすごいと思います。むしろ、そういう思い切りのよさというか勇気を見習いたいと思いました。

ポール・ランド。

“What is design ?”
“Design is the method of putting form and content together”

ポール・ランドはデザインとは形と中身を両立させる手法であるという風に定義してしています(複合的な定義があり、一つの定義で言い表すことはできないとも言っていますが)。
もしくは、形と中身の関係を作ることがデザインであると。


そうすると、デザイナーは形と中身の関係のルールについて知っていないと駄目ということですね。
与えたいイメージを想起させるカタチとか伝えたいメッセージを表すカタチとか機能を示すカタチとかということでしょうか。

それから、ポール・ランドは良いデザインはSimpleであるといっている。
それが意味するところは山崎先生曰く、ContentとFormが限りなく等しいということではないかということです。
逆に悪いデザインは表面的なもの、余分なもの、もっと言うと違うものになっていることだそうです。
難しいですね。
ContentとFormが限りなく等しい。

こういうことを真面目に考えながら、それを作品で実現もしているというのはすごいことだと思います。(作品で実現しているかどうかは僕は検証できていませんが。リチャード・サッパーがそのようなことを言っていたようです。)

抽象的なことから具体的なことまで。デザインや表現はどのレベルで感じればいいか時々分からなくなることがあります。

長くなってきたので、あとは箇条書きで気になったフレーズを。

  • シンプル(抽象化)とコンテクスト(通俗性)の入り具合のバランスをコントロールすることが大事
  • Content(中身)には2種類(中心的なものとその周りのもの)ある
→これははっきりとは分からなかったけど、データとか与件的なものとコンセプトとかメッセージ的なものということでしょうか?
  • IBMのロゴのストライプはでかい会社として威張るのではなく、半分しか目立たないような会社(インフラとかを扱う)であるべきというメッセージなのではないか。
  • “IBM”のロゴはプロダクトデザインの一部だ
  • 桂離宮・アフリカの彫刻・ピサの斜塔→コントラストとリズム
  • 斜めという要素はアテンションの機能を持つ
  • ArtにはSuperiorとActivityという2つの意味がある(by Alex)
あと先生のお勧め本↓
“From Lascaux to Brooklyn(Paul Rand)”

オリジナルの方法論か…うーん…

2008年10月18日土曜日

情報デザイン特論①

情報デザイン特論の授業が始まりました(10/17)。

山崎先生の

デザインにおいて、共通のアプローチやメソッドからは共通のアウトプットが生まれる。
だから、個人のアウトプットのオリジナリティはその人のオリジナルのメソッドによって作られる。

という観点からプロのデザイナーがどのようにそれぞれのメソッドを実践して、どんなアウトプットを残しているかを学び、最終的にオリジナルのメソッドを考えて、それに基づいたアウトプットを制作します。



確かに、有名なデザイナーとかオリジナリティのあるデザインをする人というのは独自の方法論みたいなのを持っているような気がするし(最近そういうことを書いた本もよく売ってますね…)言われてみても意外な感じはしないけど、意識してメソッドとかを作ろうとしたり、オリジナリティをメソッドから求めたことはなかったなという気がします。なんとなく、メソッドの後(もしくは前)にオリジナリティがあるようなイメージだったというか。


ということで1回目は自己紹介も兼ねて、山崎先生のこれまでのプロジェクトの紹介。

先生は大学卒業後、クリナップという会社からIBMに転職し、現在は千葉工大で教授をなさっています。プロダクトからパッケージ、ソフトウェアまでいろいろおもしろいプロジェクトをなさっていて、興味深かったです。あと社会人大学生も10年近く経験していたらしく、柔らかい顔つきの割になかなかパワフルな方です。

それでIBMでの話が結構興味深くてIBMでは依頼が入るとその内容に応じて、世界中から様々な専門分野・国籍・年齢の人たちが集まってプロジェクトチームを作って問題解決に当たります。だから、共通のプロセスとかメソッドがないとコラボレーションすることが出来ません。ということで、プロジェクトチームのメンバーを選ぶときにはある問題に対するプロセスやメソッドの習熟度・経験で選ばれるそうで、国籍や年齢は関係ないそうです。それから、そういうメソッドとかの方法だけではカバーできない部分、センスとかエモーショナルな部分、も重視していてそういうところの判断は信頼できるデザイナーに協力してもらうそうです。ポール・ランドとかリチャード・サッパーとか。
そういう経緯があって山崎先生はデザインのメソッドやプロセスというのを重視しているんですね。



あとは、どのプロジェクトもおもしろかったのですが、長くなるので気になったフレーズだけを記しておきます。

  • ユーザ調査などのデータはvizual化してこそ情報としての意味がある。それも情報デザインの仕事のひとつ。
  • "あー、そうだよね" という感覚がデザインにあるとユーザが共鳴できる。でも、露骨だとユーザの想像を許さないから駄目。
  • Out of Box の Experience デザイン。
  • Context(Content?) と Formの関係を作ることがDesign だ。 -ポール・ランド
どのプロジェクトにおいても、ユーザの製品にまつわる経験のプロセス(全体もしくはその要素)からその製品のコンテンツを考えて形へと至っているということが感じられました。

最後に授業の終わりのワークショップについて

デザインのアプローチには2通りあります。形から考え始める場合とユーザの生活シーンから考え始める場合。形から考えるだけでは考え至らないデザインもあります。
ということを体験するものでした。



ユーザ視点で考えることが大事。
ということ以上に個人的に感じてしまったのが、生活シーンからプロダクトやサービスまでを志向する意識が薄くなっているということでした。
というのも、僕は結構微妙な学科/専攻に属していてデザインだけを専門的に学んでいるわけではなく、学年があがるにつれてデザインのプロジェクトよりもエンジニア的な研究とかリサーチのプロジェクトを行うことが多くなっていました。
で、他の学生は基本的にバリバリプロダクトデザイン専攻で、ちょっとしたワークショップですが、何かモノを提案しようという貪欲さとまではいかなくても、志向を少し感じたのでした。
似たようなことは最近行ってるインターンでも感じたんですが、いろんな側面があるとはいってもやっぱりデザインを仕事にしていきたいなら、もう少し製品・サービスへの志向というものを持たないと駄目だなあと感じました。

あと今回の授業で出た参考書籍(たぶん…)↓
"ウェブ戦略としての「ユーザーエクスペリエンス」"