2008年11月16日日曜日

情報デザイン特論⑤

最終課題に向けて自分たちが用いるデザイン手法のアイデアを発表して、みんなでディスカッションをしました。

実際には、具体的なデザイン手法というよりはこういう意識で考えていきたいという感じで、具体的にはどうしようか、今までの手法でいいのだろうかというようなことをみんなで考えました。
みんなそれぞれがどうすれば正しいと思えるようなプロセスと成果物を得ることができるのか悩み中という感じでしたが、それぞれの悩みポイントに個性が出ているようでした。
そういう部分が次回の発表時にも表れているとおもしろいだろうなと思いました。

でも、Alexだけはやっぱりデザイナーとして実務経験があるからか、手法について話しているときの実感というか気持ちの確かさが違うような気がしました。
特に「手法は問題によって変わるから自分自身のgeneralな手法なんかはないよ」というような言葉とかその時の態度が印象に残りました。

ところで、Alexの発表資料はいつもかっこいいです。
僕もああいう画面の使い方や運び方をマネしてみようといつも思います。
今度Alexにあったときに資料下さいと言ってみようかな…

2008年11月9日日曜日

情報デザイン特論④

ペーパープロトタイピングとEdward Tufteについてです。

ペーパープロトタイピングはインタラクションのある製品やサービスをデザインするためのデザイン手法でデザイン案の検討、提案、内部評価、ユーザ評価のデザインプロセスの各段階で使うことができるものです。

簡単に言うと、製品やサービスの体験がテストできるだけの最低限のつくりのモデル(人が演じることも含めて)を作って、その体験を確認する手法です。

これによって、ユーザや他分野のメンバーをデザインに参加させることができ、その結果早い段階でユーザからのフィードバックを得たり、すばやい反復開発が可能になるとのことです。

前回出てきたリチャード・サッパーは文字通りペーパープロトタイピングでアイデア検討を行っていたそうで、自分が作るモデルははさみと紙とホッチキスだけで作っていたそうです。

山崎先生曰く、そのポイントは6つあって、
  1. 手書き、手作り、ラフに作る
  2. まずベースを作る
  3. 通常よりやや大きめに作る
  4. 白黒ではっきり作る
  5. 詳細は口で説明する
  6. 部品、既存製品、ポストイット、のり・ホッチキスを活用する
だそうです。

ペーパープロトタイピングについて書かれたお薦め本↓
“ペーパープロトタイピング:最適なユーザインタフェースを効率よくデザインする”
“Sketching User Experiences : Getting the Design Right and the Right Design”


“Sketching~”では具体的なプロトタイピングの例が載っているそうなんですが、例えばオズの魔法使いのようなプロトタイピングを考えようということで、PCに音声入力でテキストを表示するというシステムのプロトタイピングをするのにソフトをプログラミングする必要はなくて、下の絵のようなカタチで隣で入力の声を聞いている人が手動で打ち込むというやり方がありました。体験自体は確かにそれでも十分確認できるだろうし、時間もかかりません。



こういう風に体験とかインタラクションの良し悪しだけを粗末なプロトタイプで確認するということはいいことかもと思います。
実際に動くものを作っちゃうと結構実際に動いた感動とか満足感が入っちゃって少しアイデアの評価がぶれてしまうこともある気がするので…

そして、デザイナーはデザインそのものだけでなく、そういう手法自体を考える(デザインのデザイン)ことでアウトプットをより良く、より早くしていく必要もあるのではないかということでした。
どういう方法でアイデアを出して、どういうプロトタイプを作って、どういう評価手法をとってということに意識的であること。

それからEdward Tufteについて。

Edward Tufteは情報デザイナー/グラフィックデザイナーです。

“Escaping Flatland”がコンセプトだそうです。

Flatlandというのは情報にPriorityや構造がなくごちゃごちゃした状態のことで、情報を表現するときにはそういう状態を避けなければいけないということです。

そのために
  • Micro/Macro Readings→マクロな情報とミクロな情報の組み合わせ
  • Layering and Separating→情報を分離しながら重ね合わせる
  • Small Multiples→多くの要素があることでそれぞれの違いが見える
  • Color and Information→色によって情報を区別できる
などの要素が重要だということだそう。

Tufteの本↓
“Visual Explanation”
“Envisioning Information”
 など

洋書しかないようです。


で、来週は“シニア層を対象とした携帯電話の製品デザインをauに提案する”
という最終課題に向けて、自分のデザイン手法のアイデアを発表しなければいけません。

発表項目は
  1. これまでの手法の問題点や改善すべき点は?
  2. 提案する手法の特徴は?
  3. これまでの手法と異なる点は何か?
  4. 提案する手法のプロセスは?
  5. 提案する手法の各プロセスにおける具体的な手法は?
です。結構ヘビーです。
ちょっと考えてみよう…

2008年11月2日日曜日

情報デザイン特論③

3回目。ペルソナという手法とプロダクトデザイナーのリチャード・サッパーの話題を中心に。


ペルソナとはデザインや企画においてその対象ユーザを理解、明確化する手法の一つです。



←対象ユーザの理解、明確化はユーザの満足や体験という視点からのデザインのアプローチ(人間中心設計)において、その基本となる部分です。



対象ユーザの理解、明確化にはユーザの理解、ユーザの表現、の2つの段階があります。
そして、そのそれぞれにおいていくつかの手法が存在します。
  • ユーザの理解
  -(グループ)インタビュー
  -アンケート調査
  -フィールド調査
  -観察法
  -タスク分析
  • ユーザの表現
  -ペルソナ
  -ユーザーシナリオ
  -ユーザーモデル
  -ユーザーロール、ユーザーゴール
  -ユースケース
  -UML(Universal Modeling Language)

ペルソナはユーザの表現のための手法です。
具体的にはユーザについて名前、性別、職業などの詳細なデータを仮定し、文章によるシナリオと顔写真等の画像で表現します。


そのプロセスは以下のようになります。

ペルソナの設定ペルソナの目標の設定ペルソナのシナリオの設定

ペルソナの設定:対象となる典型的なユーザの名前、性別、年齢、職業、顔写真といった基本情報、ユーザの家庭内や企業内などでの役割、ユーザの好み(ブランド・プレファレンス)などの設定
ペルソナの目標の設定:製品に求める機能ではなく、達成したい目標を設定
ペルソナのシナリオの設定:目標を達成しようとするときの典型的なシナリオ、頻度は高くないけど必須なシナリオの記述

そのようにして表現することで、設計や企画において対象ユーザを具体的に想像することができ、またグループで行う際には共通のユーザ像を持って、議論を進めることができるようになります。
山崎先生が前にいらっしゃったIBMにおいてはプロジェクトが様々な国籍、専門のメンバーで構成されるため、ユーザ像を共有するためにペルソナ手法によって対象ユーザを明確化する必要があったそうです。

ペルソナについてはそんな感じです。
僕はこの手法に沿ってユーザの理解や設定を行ったことはありませんが、これだけでもかなり骨が折れそうですね。
でも、実際ユーザ、特に自分とは違う層(年齢とか趣味)のユーザが求めるニーズや感じるリアリティを考えるというのはなかなか難しいですし、油断すると各場面で自分に都合の良いように加工してしまいがちな気はしますので、明確に表現するということは大事なのかもしれませんね。


リチャード・サッパーの話。

リチャード・サッパーのデザインについての方針というか意識していることとして“彫刻的なデザイン”と“飽きないための動きのあるデザイン”ということがあるらしい。

彫刻的なデザインとはいろんな角度から見たときの形状の変化やつながりや連続性といった要素を意識したデザインという意味です。ビデオの中でサッパーはヘンリー・ムーアの彫刻を熱心に見ていた。
それからサッパーは飽きないデザインというのを考えていたらしく、見ていて飽きないものとして自然があり、自然が飽きないのは常に変化している、動いているからということで動きのあるデザインを心がけたそうです。

かっこいいです。
最近のデザイン家電!みたいなのはかっこよくても買いたいとは思えないことが多いですけどこれは欲しいと思えます。








その他↓

ユーザに提供し得る価値には2つある。
それぞれ価値の投資量と顧客満足の関係。
アイデアや問題点の整理のプロセス。


















終わり。

2008年10月25日土曜日

情報デザイン特論②

今回は学生の自己紹介と佐藤雅彦、ポール・ランドの仕事と方法論について。

学生には社会人経験者が2人いて、1人はある国のプロのグラフィックデザイナーだったのを自国の小さな枠では収まることができない!ということでその国で年に1人(!)の奨学生として日本にやってきて、またデザインを学んでいるらしいです(具体的に何を研究しているかは英語が分からず、理解できませんでした。しかも、確か聞いたのは2回目だけど…)
もう一人は東京の大学でドイツ語を勉強した後、外国に1年留学して帰ってきて、武蔵美の通信課程に行きながら、家具の制作会社で4年間働いて、この秋からうちの大学でデザインを学んでいるそうです。
2人ともなんか自由で夢とチャレンジがあっていいなあと思いました。
僕はM1なのでそろそろ就活の時期で、いろんな不安が頭の中を渦巻いているので、なんだか少し勇気付けられた気分になりました。

で、佐藤雅彦とポール・ランドについて。

佐藤雅彦については僕も好きで実は紹介された“佐藤雅彦全仕事”も既に持っていました。
今、ふとWikipediaで検索してみると職業としてメディアクリエーター(表現者)と教授となっていました。“メディアクリエーター”って初めて聞きました…

大学は教育学部で卒業後入った電通で初め営業職だったところから転局試験を経て、クリエイティブ局に異動し、そこから初めてデザインとかCMを本格的にやり始めたそうです。つまりデザインは独学です。
ではいったいどのような方法論でCMやグラフィックをデザインしたのか。

それは“ルール+トーン”というものだそうです。

ルールというのは良いデザインやCMを作るための法則のようなもので彼の場合、CMを作ることから始めているので、世界の優れたCM集の中から自分が好きだと思うものを抜粋し、それらに共通する要素を見つけ出し、それを“ルール”として自分の作品にも適用したのだそうです。
トーンというのはそのルールをもとに作品を成立させる個性やディテールといえるものです。例えルールを知っているからといって、そのルールをもとにすれば誰でもが佐藤雅彦のようないい感じの作品にできるわけではなくて、そこには佐藤雅彦のトーンがあるからこそなんですね。

その後、今度は既にあるルールではなく、自分なりのルール、新しい考え方を生むべく、電通をやめて個人で活動するようになったそうです。


ルールとトーン。
デザイナーはまず、ルールを知らなければならない。そして、それに自分のトーンを加えていく、もしくはあえてそのルールを破っていく、ということで良い作品・デザインが生まれる。
という山崎先生の意見に僕も全面的に賛成です。
アーティストにおいても基本的にはそうだと思います。
研究においては基本です。

でも、たとえそんな風にルールとかトーンっていう方法論を持っていたとしても、30歳でほとんど経験したことのない分野であんな普通じゃない作品を堂々と提案するというのはすごいと思います。むしろ、そういう思い切りのよさというか勇気を見習いたいと思いました。

ポール・ランド。

“What is design ?”
“Design is the method of putting form and content together”

ポール・ランドはデザインとは形と中身を両立させる手法であるという風に定義してしています(複合的な定義があり、一つの定義で言い表すことはできないとも言っていますが)。
もしくは、形と中身の関係を作ることがデザインであると。


そうすると、デザイナーは形と中身の関係のルールについて知っていないと駄目ということですね。
与えたいイメージを想起させるカタチとか伝えたいメッセージを表すカタチとか機能を示すカタチとかということでしょうか。

それから、ポール・ランドは良いデザインはSimpleであるといっている。
それが意味するところは山崎先生曰く、ContentとFormが限りなく等しいということではないかということです。
逆に悪いデザインは表面的なもの、余分なもの、もっと言うと違うものになっていることだそうです。
難しいですね。
ContentとFormが限りなく等しい。

こういうことを真面目に考えながら、それを作品で実現もしているというのはすごいことだと思います。(作品で実現しているかどうかは僕は検証できていませんが。リチャード・サッパーがそのようなことを言っていたようです。)

抽象的なことから具体的なことまで。デザインや表現はどのレベルで感じればいいか時々分からなくなることがあります。

長くなってきたので、あとは箇条書きで気になったフレーズを。

  • シンプル(抽象化)とコンテクスト(通俗性)の入り具合のバランスをコントロールすることが大事
  • Content(中身)には2種類(中心的なものとその周りのもの)ある
→これははっきりとは分からなかったけど、データとか与件的なものとコンセプトとかメッセージ的なものということでしょうか?
  • IBMのロゴのストライプはでかい会社として威張るのではなく、半分しか目立たないような会社(インフラとかを扱う)であるべきというメッセージなのではないか。
  • “IBM”のロゴはプロダクトデザインの一部だ
  • 桂離宮・アフリカの彫刻・ピサの斜塔→コントラストとリズム
  • 斜めという要素はアテンションの機能を持つ
  • ArtにはSuperiorとActivityという2つの意味がある(by Alex)
あと先生のお勧め本↓
“From Lascaux to Brooklyn(Paul Rand)”

オリジナルの方法論か…うーん…

2008年10月18日土曜日

情報デザイン特論①

情報デザイン特論の授業が始まりました(10/17)。

山崎先生の

デザインにおいて、共通のアプローチやメソッドからは共通のアウトプットが生まれる。
だから、個人のアウトプットのオリジナリティはその人のオリジナルのメソッドによって作られる。

という観点からプロのデザイナーがどのようにそれぞれのメソッドを実践して、どんなアウトプットを残しているかを学び、最終的にオリジナルのメソッドを考えて、それに基づいたアウトプットを制作します。



確かに、有名なデザイナーとかオリジナリティのあるデザインをする人というのは独自の方法論みたいなのを持っているような気がするし(最近そういうことを書いた本もよく売ってますね…)言われてみても意外な感じはしないけど、意識してメソッドとかを作ろうとしたり、オリジナリティをメソッドから求めたことはなかったなという気がします。なんとなく、メソッドの後(もしくは前)にオリジナリティがあるようなイメージだったというか。


ということで1回目は自己紹介も兼ねて、山崎先生のこれまでのプロジェクトの紹介。

先生は大学卒業後、クリナップという会社からIBMに転職し、現在は千葉工大で教授をなさっています。プロダクトからパッケージ、ソフトウェアまでいろいろおもしろいプロジェクトをなさっていて、興味深かったです。あと社会人大学生も10年近く経験していたらしく、柔らかい顔つきの割になかなかパワフルな方です。

それでIBMでの話が結構興味深くてIBMでは依頼が入るとその内容に応じて、世界中から様々な専門分野・国籍・年齢の人たちが集まってプロジェクトチームを作って問題解決に当たります。だから、共通のプロセスとかメソッドがないとコラボレーションすることが出来ません。ということで、プロジェクトチームのメンバーを選ぶときにはある問題に対するプロセスやメソッドの習熟度・経験で選ばれるそうで、国籍や年齢は関係ないそうです。それから、そういうメソッドとかの方法だけではカバーできない部分、センスとかエモーショナルな部分、も重視していてそういうところの判断は信頼できるデザイナーに協力してもらうそうです。ポール・ランドとかリチャード・サッパーとか。
そういう経緯があって山崎先生はデザインのメソッドやプロセスというのを重視しているんですね。



あとは、どのプロジェクトもおもしろかったのですが、長くなるので気になったフレーズだけを記しておきます。

  • ユーザ調査などのデータはvizual化してこそ情報としての意味がある。それも情報デザインの仕事のひとつ。
  • "あー、そうだよね" という感覚がデザインにあるとユーザが共鳴できる。でも、露骨だとユーザの想像を許さないから駄目。
  • Out of Box の Experience デザイン。
  • Context(Content?) と Formの関係を作ることがDesign だ。 -ポール・ランド
どのプロジェクトにおいても、ユーザの製品にまつわる経験のプロセス(全体もしくはその要素)からその製品のコンテンツを考えて形へと至っているということが感じられました。

最後に授業の終わりのワークショップについて

デザインのアプローチには2通りあります。形から考え始める場合とユーザの生活シーンから考え始める場合。形から考えるだけでは考え至らないデザインもあります。
ということを体験するものでした。



ユーザ視点で考えることが大事。
ということ以上に個人的に感じてしまったのが、生活シーンからプロダクトやサービスまでを志向する意識が薄くなっているということでした。
というのも、僕は結構微妙な学科/専攻に属していてデザインだけを専門的に学んでいるわけではなく、学年があがるにつれてデザインのプロジェクトよりもエンジニア的な研究とかリサーチのプロジェクトを行うことが多くなっていました。
で、他の学生は基本的にバリバリプロダクトデザイン専攻で、ちょっとしたワークショップですが、何かモノを提案しようという貪欲さとまではいかなくても、志向を少し感じたのでした。
似たようなことは最近行ってるインターンでも感じたんですが、いろんな側面があるとはいってもやっぱりデザインを仕事にしていきたいなら、もう少し製品・サービスへの志向というものを持たないと駄目だなあと感じました。

あと今回の授業で出た参考書籍(たぶん…)↓
"ウェブ戦略としての「ユーザーエクスペリエンス」"